2006年 10月 7日 (土) 

       

■  〈賢治の歌〉541 望月善次 年若きヒノキ揺らげば   

 (第六日昼)
  年わかき
  ひのきゆらげば日もうたひ
  碧きそらよりふれる綿ゆき。
 
  〔現代語訳〕年の若い檜(ひのき)が揺れ動くと、(対応するように)太陽も歌い、(さらに対応するように)紺碧(ぺき)の空から降っている綿雪なのです。

  〔評釈〕「大正六年一月/一九一七年」二十一首中(〔ひのきの歌〕)の十五首目の「443歌」で、「第六日昼」として置かれた一首。「ひのき」や「日」(やおそらくは「綿ゆき」も)を、自身と同じレベルのものとする話者の基本的姿勢から(表現的には、それは必然的に、中村明のいう「結合比喩(ゆ)」、伝統的修辞法で言えば「擬人法」、を生むことになる。)繰り出されて、「ひのき」や「日」や「綿ゆき」が「碧(あお)きそら」を背景として明るく交差し合う。いかにも「昼」に相応(ふさわ)しい一首。これが、実景に基づくものであれ、そうでないにしろ、「若さ」というものが何を見るのかの一端が窺(うかが)い知れる。卓越した秀歌というのには遠いが、賢治にもこうした作品があると何故(なぜ)かホッとするところもある。
(岩手大学教授)


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