2006年 10月 22日 (日) 

       

■ 〈盛岡百景〉86 秋になればひときわ存在感 県合庁前のユリノキ

     
  大きな緑陰をつくる県合同庁舎前のユリノキ・ケヤキ群  
 
大きな緑陰をつくる県合同庁舎前のユリノキ・ケヤキ群
 

 内丸の官庁街の木と言えば、1957年に全国第1号の指定を受けた官公庁団地整備の際、植えられたトチノキの街路樹だろう。初夏に咲く、ソフトクリームのような白い円すい形の花は大きな葉によって地上から見えにくいが、秋になれば大きな実が熟して歩道、車道にたくさん落果する。街路樹がトチノキと再認識する市民もいることだろう。

  約半世紀前に植えられたトチノキより、ひときわ大きな樹形を見せているのが、市役所前の丁字路、県合同庁舎前のユリノキとケヤキだ。

  74年に盛岡市の保存樹木に指定されたユリノキ・ケヤキ群はユリノキ1本とケヤキ3本で形成され、圧倒的な存在感を示す。周囲のビルに入る機会があったら、木々の辺りを見下ろしてみるといい。下を通る人々が、大木のせいでことのほか小さく見える気がする。

  木々は同市の資料によると、樹齢80〜110年程度と推定されている。この辺り、69年落成の県合同庁舎が建設される前は、県工業指導所などの跡地だった。大きなケヤキは樹高16メートルを超え、枝張りも同程度の幅を持つ。葉が緑の時期は枝振りのいいケヤキに目に行きがちだろう。だが、秋にはケヤキとは違う色に紅葉したユリノキの方に目に留まるかもしれない。

  4本の木がつくり出す緑陰は、ビルが並ぶ官庁街では貴重な空間。汗ばむ陽気の日は、信号待ちの歩行者らも木陰では体感温度が下がると実感するはず。いったい1度に何人が木陰に入れるのかと試してみたくなる。

  保存樹木は周囲がグリーンプロットとして整備された。よく見ると1個の標石が置かれている。盛岡市道路元標と彫られている。道路元標とは20年に施行された旧道路法で、各市町村に1カ所設置することになったもの。各市町村の道路起点となった。

  旧道路法は52年に廃止。新道路法で元標は道路付属物と位置付けされるが、新設や更新に言及されず、道路整備などで当時の市町村に置かれた元標には消えたものも少なくないようだ。盛岡の標石は官公庁団地の整備中、一時避難していたが、元に戻された。

  グリーンプロットには低木の植え込みもあり、ベンチが設けられている。しかし、先を急ぐ人は多くても休む姿はほとんどない。時にはここで涼を取り、茂みの中でひっそりと余生を送っている標石から、歴史の時間を感じてみてはどうだろうか。

(井上忠晴記者)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします