かたくりの
葉の斑(ふ)は消えつあらはれつ
雪やまやまのひかりまぶしむ。
〔現代語訳〕今見ているカタクリの葉の斑らは、消えたり現れたりしていて、雪のある山々の光がまぶしく感じられます。
〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正六年四月」四十二首中の十五首目の「465歌」。「斑」の「ふ」のルビは原文。「歌稿〔A〕」では、第四句から結句にかけては「雪山々の光」であった。「カタクリ(片栗)・カタカゴ」は、ユリ科の多年草で、紅紫の花弁が美しい、東北などの早春を代表する植物。厚めの葉に、紫の斑がある。モデル説を取れば、南昌山(「経埋ムベキ山」の一つ)だと言えることは、昨日も触れた。岩手の早春の代表的な花でもあるカタクリの斑らと雪のある山々との対比も印象的であるが、「視線の転換」から言えば、近景の「カタクリの葉の斑」から、遠景の「雪やまやま」へと視線が転じているわけで、それは賢治短歌を代表する一つの方法であることは再三述べているところ。
(岩手大学教授)
|