2006年 11月 1日 (水) 

       

■  〈夜空に夢見る星めぐり〉168 八木淳一郎 一杯の星座  

 秋の星空は1等星が南のうお座のフォーマルハウト1個のみと、夏や冬に比べて極端に少なく、地上の景色に呼応して何か物うげな雰囲気を漂わせています。その頼みの綱のフォーマルハウトも、地平に近いところでこれまた憂うつそうにポツネンと鈍く光っているものですから、ますますメランコリックな気分になるというものです。

  そんな何とも力のないフォーマルハウトではありますが、神話の世界では大きな魚のこれまた大きな口を意味する星で、しかもその上の方にあるみずがめ座のみずがめから流れ出る水−実はお酒(水は水でも狂水という訳で)−をしめしめとばかりに飲み干しているのです。これではますます秋の季節にふさわしいではありませんか。

  こんなうわばみのような南のうお座にさぞ親近感をいだかれる御同輩も少なくないとは思いますが、ビルの上に光っているフォーマルハウトを見た途端、条件反射が作動して、赤ちょうちんやのれんのさがった店に直行するご仁はアルコール依存症の疑い濃厚です。

  さてフォーマルハウトが西空に傾くのは夜半過ぎ。そのころにはおうし座のアルデバランが東南の高い空まで上がってきています。

  腕に覚えのある午前さまとはいえ、アルコールで真っ赤になった顔色とアルデバランの赤さを競うような危険なことはくれぐれも慎みたいものです。

  アルデバランという星は膨らんだり縮んだり大きさが不規則に変化しています。それに対して財布の方もそれならいいのですが、最初はぱんぱんに膨らんでいたのに気前がよすぎるばっかりにだんだん意気消沈、というんじゃあしょせんアルデバランの敵ではありません。

  すっからかんの財布片手に木枯らし吹く街をふらふらさまよう姿は、星々の間を縫うように動いていく惑星にそっくり。おっと、そんなあなたにうってつけの相棒がおりました。明け方近い時間には、もう春の星座が、その一つ、しし座の1等星レグルスの近くに土星が光っていて、無事山の神のおとがめなしに玄関から入れるようにと付き添ってくれる様子です。
  (盛岡天文同好会会員)

 



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