2006年 11月 2日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉566 望月善次 朝のホオ、たたえて谷に   

 朝の厚朴(ほう)
  たゝえて谷に入りしより
  暮れのわかれはいとゞさびしき。
 
  〔現代語訳〕朝の厚朴を褒め讃(たた)えて、谷に入ったものですから、暮れの別れが本当に寂しいのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正六年四月」四十二首中の十六首目の「466歌」。「歌稿〔A〕」では「朝の厚朴嘆へて谷に入りしより暮れのわかれはいとゞさびしき」となっていたが、『新校本全集』は、「嘆へて」は「歎へて」の誤りかとしている。また「厚朴」のルビの「ほう」は原文のママだが、今日の仮名遣いでは「ほお」となるところ。なお、末尾に「三 南昌山」とあることについては既に触れた。「朴・厚朴」は、モクレン科の落葉高木。五月ごろには、「黄白色で香気の強い9弁の花を開く」〔『マイペディア』〕のだが、後に続く作品からは、賞賛の核心は、この香気だと考えでもよいであろうか。短歌としての鋭さはないが、発想的には「いかにも賢治らしい」ところを見せている一首。
  (岩手大学教授)



 



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