2006年 11月 3日 (金) 

       

■ 〈賢治の歌〉567 望月善次 群青の空にふるうは

 群青の
  そらに顫ふは
  木(こ)のはなの
  かほりと黒き蜂のうなりと。
 
  〔現代語訳〕群青色の空に顫(ふるえ)えているのは、(厚朴の)花の香りと黒い蜂の唸りの音とです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正六年四月」四十二首中の十七首目の「467歌」。「群青」は、「(ultramarine)青金石(lazurite)という鉱物から作る青色の顔料」〔『広辞苑』〕。「賢治は夕焼の黄色(→黄水晶:シトリン)の空と対照的に、山脈の青黒さに好んで群青を用いる」〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕という。「木」は、昨日対象とした「466歌」から「厚朴」で、「黒き蜂」は、次に置かれる「468歌」から「スガル」を指す。「顫」は「亶(振るえる)+頁(頭)」で、「体が寒くてふるえる」のが原義の漢字。直接描かれているのは「かほり」と「うなり」なのだが、その背後にある「厚朴の木」や「黒き蜂」が浮かんで全てが合体して働きかけるのが、文学における「イメージ」の力。
  (岩手大学教授)

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