2006年 11月 8日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉572 望月善次 ひしげたるラッパの前に 

 ひしげたる
  ラッパの前に首ふりて
  レコードを聴く
  幹事の教授
 
  〔現代語訳〕押しつぶされた(蓄音器)のラッパの前で、首を振って、レコードを聴く幹事の教授よ。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正六年四月」四十二首中の二十二首目で「471歌」の次の頁の右下隅に書かれた「471・472a歌」。第二句までの「ひしげたる/ラッパの前に」は、470歌の「ラッパ剥(は)げたる蓄音器」と471歌の「ひしげたる/蓄音器」を合わせたような表現。「ラッパは剥げて、押しつぶされている」のであろうか。その前で、幹事の教授が、首を振ってレコードを聴いているというのだから、そのレコードは、「音楽」のレコードで、蓄音器から流れて来る曲に合わせて首を振っている姿などを想像すればよいのであろうか。話者の「教授」への思いは表されていないが、「32歌」や「302歌」の「教師」の描き方と合わせると、あるいは複雑な思いが背後にあるやも知れぬ。
(岩手大学教授)




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