2006年 11月 9日 (木) 

       

■  〈お父さん絵本です〉133 岩橋淳 ぴかくんめをまわす

 ビルの建ち並ぶ、大都会。夜明けの交差点にたたずむ長身の彼は、直立のまま、うとうと、黄色い点滅を繰り返しています。聞こえるのは、牛乳配達、瓶のぶつかり合う音。新聞配達の、バイクの音。信号機・ぴかくんの一日は、こうして、そろそろと始まります。

  本作の刊行は40年前。長さんの画風も、大きな鼻の人物が行き交う、初期のもの。描かれている風俗も、おまわりさんがぴかくんのスイッチを切り替えたり、早朝のビル街にも生活感がにじんだりと、しごくのどかなもの。ぴかくん自身も、緑と白の縞模様をあしらった昔懐かしいデザインです。街は高度成長期を迎え、希望に満ちあふれた人々の…、いいえ! 時代はすでに、「交通戦争」のまっただ中。ひとたび通勤ラッシュが始まれば、たいへんな忙しさ、騒がしさ。あお、き、あか。あお、き、あか。懸命に合図を送って交通整理を勤めるぴかくんですが、あれ? なんだかおかしくなってきた…。すわ、一触即発!

  展開の緩急、こどもたちは手に汗、かもしれません。でも、作品が醸し出す人情味は、読者が安心して絵本の世界に遊べるフィールドを形作り、しっかり保っているのです。

  【今週の絵本】『ぴかくん めをまわす』松居直/さく、長新太/え、福音館書店/刊、780円(税込み)3歳〜(1966年)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします