2006年 11月 10日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉574 望月善次 さくらばな日詰の駅の 

 さくらばな
  日詰の驛のさくらばな
  風に高鳴り
  こゝろみだれぬ。
 
  〔現代語訳〕桜の花よ。日詰の駅の桜の花よ。風に高い音で鳴っていて、心が乱れました。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正六年四月」四十二首中の二十四首目の「473歌」。初句から第三句にかけての「さくらばな/日詰の驛のさくらばな」と「さくらばな」を重ねた畳みかけるような表現は、話者の「さくらばな」への強い思いを表している。また「日詰の驛」という固有名詞からも、この「日詰」という場所が話者に特別なものであることも示している。結句にも「こゝろみだれぬ」とあるから、「高鳴り」をしているのは、桜ばかりでなく、話者の心にも及んでいるのだともできるであろう。日詰が、賢治の岩手病院時代の恋人に想定される方に関係する土地である意見もあることは既に昨日紹介した。しかし、伝記的事実をストレートに出すような賢治短歌ではないことも忘れてはなるまい。
(岩手大学教授)



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