焼杭の
柵にならびて
あまぞらを
風に高鳴る
さくらばななり
〔現代語訳〕焼杭の柵に並んで立ち、天空を風に高く鳴る桜の花なのです。
〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正六年四月」四十二首中の二十五首目の「473歌」の下に書き加えられて抹消された「473・474a歌」。「焼杭の/柵にならびて/るりいろの/風に高鳴らす/さくらばななり」の形もあった。この書き加えの後にも、さらに「473・474b歌」・「473・474c歌」と何度も書き直されているから、作者の思い入れの深さは明白である。結論的なことを言ってしまっておけば、書き直しても、書き直しても、遂に決定稿には至らなかったのである。「473歌」との相違の最大のものは、「473歌」において、「こゝろみだれぬ。」と露(あら)わに書き込んでいた話者の心情を抑制した点であろう。心情の抑制の後には、「柵」や「ならびたち」が加わったのである。
(岩手大学教授)
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