おきな草
とりて示せど七つ森
雲のこなたに
むずかしき面(おも)
〔現代語訳〕翁草を採って示しましたが、七つ森は、雲のこちら側で難しい顔をしていますね。
〔評釈〕「歌稿〔B〕」「大正六年四月」四十二首中の三十六首目の「488歌」。『校友会会報』第三十四号(大正六年七月)には、「おきなぐさ とりてかざせど 七つ森 雲のこなたにひねくれし顔」の形。「歌稿〔A〕」では、結句を「むずかしき面」とした後、第二句は「なげ贈れども」と推敲(すいこう)。第二句と結句とがなかなか定まらなかった事情を告げている。「七つ森」は、短歌の他にも「秋田街道」をはじめとして、詩や童話にもしばしば登場する(特に初期の)賢治作品にとって重要な場所。抽出歌においては、「七つ森」に対して、まるで人間を相手にするかのように語りかけているが、このことは、「七つ森」が単に作品登場頻度が高いだけでなく、親しみの存在でもあったことも示している。
(岩手大学教授)
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