2006年 12月2日 (土) 

       

■  〈英語ってどうなってんの?〉173 成田浩 意味を創り出す

 文章体ではありますが、次の文もやはり日本人にはなじみにくいものです。

  A little walk will give you a good appetite for breakfast.なども、「少しの散歩があなたによい食欲を与えるでしょう」などと直訳すると、とても変な感じがします。そこからスタートして、「ちょっと散歩してくれば、朝食がおいしく食べられるでしょう」という意味にたどりつくにはかなりの推察が必要です。

  かといって、If you have a little walk, you will get a good appetite. と言うことなんだと言われても両者の表現は結びつきません。

  give(与える)という動詞の主体となる行為者のくる位置に、人間以外のものもくるからだと説明されることがごく普通に行われていますが、それなら、日本語にだってあります。

  例えば「あなたのほほ笑みが他の皆によい印象を与えます」などと言うのですから。では、分かりにくさの原因は何でしょう。それはgive=[与える]ではないということになるでしょう。

  ここでのgiveは、物事が人にある感情を起こさせるという意味なのです。しかし、そこにも反論はあります。意味というものは中心的意味から周辺へと限りなく広がっていくものなのだからgiveの中心的意味が「与える」だとしたら、人はそこから文脈や状況に照らして、その場に合う意味を創(つく)っていくのだ。それが日常の言語的な営みだとすることもできるでしょう。

  しかし、それも、文化圏が違うと限度があります。実際問題として、give が使われるあらゆる意味を辞書に書くことなどできるものではありません。辞書書きをしたことのある人なら、痛いほど分かっているはずです。辞書の限られた意味記述から、ある文脈にどんぴしゃりの意味を考えつくには、その言語を練習によって習熟して、推察力をつけるしかないようです。

  言語学者は意味とは何かをとらえようとしてきました。しかしまだ明快な答えはありません。でも、一方で人は新しく意味を創っていることは確かです。
(言語人文学会顧問)

 英文助言:ケヴィン・ショート 岩手大学外国人教師


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