2006年 12月2日 (土) 

       

■  〈賢治の歌〉595 望月善次 七つ森、青鉛筆を

七つ森
  青鉛筆を投げやれば
  にはかに
  機嫌を直してわらへり。
 
  〔現代語訳〕七つ森に青鉛筆を投げてやると、急に機嫌を直して笑ったのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」「大正六年四月」四十二首中の三十七首目の「489歌」。『校友会会報』第三十四号(大正六年七月)には、「七つ森 青鉛筆を さゝぐれば にはかに 機嫌を直したりけり」の形で発表された。客観的事実としては、「七つ森」自身が変化をするわけはないから、「七つ森」の変化は、すなわち、話者の感慨の変化でもある。この場合、話者がそのイメージ世界の中で実際に「青鉛筆を投げた」結果として、「七つ森」が「機嫌を直してわらへり」と思ったのかどうかは明らかではない。あるいは「機嫌を直してわらへり」という直観があって、それに「青鉛筆」のイメージが付いてきたのかもしれない。その事実関係の如何(いかん)にかかわらず、こうなると賢治の独壇場の世界となる。
(岩手大学教授)

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