2006年 12月3日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉596 望月善次 夕陽の中に鎖されし

 薄明の
  夕陽のなかに鎖されし
  白雲と川
  また七つの丘と。
 
  〔現代語訳〕ほのかな夕陽の中に閉じ込められた、白雲と河よ。そして七つの丘よ。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」「大正六年四月」四十二首中の三十八首目の「490歌」。『新校本全集』では、「薄明の/寒天の夕陽のなかに〔鎖〕されし/白雲と川/また七つの丘と。」を採っているが、敢(あ)えて右に示した形とした。『校友会会報』第三十四号(大正六年七月)にも、類似歌「たそがれの 汁にとつぷり ひたり入る しら雲と河と 七つの丘と。」がある。『新校本全集』とのズレを指摘しただけで、その詳細に触れることができないのだが、「歌稿〔A〕」、「歌稿〔B〕」ともいくつかの読みが可能であることだけは告げておこう。「薄明」は、朝夕に用いられるが、ここでは夕べ。「鎖(とざ)されし」が賢治らしい把握か。なお、結句の「また」は短歌節調の上からは、やはり無理。
(岩手大学教授)

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