■ 〈ドイツ西部の森と街へ〉4 下田一 食物連鎖と植生遷移の仕組み
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陽の差し込まない薄暗い道をさらに進むと、あちこちに太い倒木が見える。
ポット教授「このミズナラのように、300年の老齢になって枯れても、整理をしないでそのまま放置しておく」「枯れ木の中に住み着いた幼虫は、キツツキの食べ物になる」「枯れ木は、幼虫に食べられたり、細菌やキノコによって腐朽が進んで土に染みこんで養分になる」「その養分を植物が吸収して育つ。植物の葉っぱを昆虫や動物が食べて育つ」「いわゆる食物循環、栄養循環によって、この森は自然に更新されていく」「そのためには同じ樹木、同じ樹齢ではなく、異種、異齢で混交している森林が、もっとも良い姿であり、健全である」と、森の中の食物連鎖と植生遷移の仕組みを説明する。
比較的明るくなっている場所がある。「大木が老齢になって倒れると、林冠(地表を覆っている枝の広がり)の一部が空間になって、地表に太陽光線が届くようになる」「すると地表に落ちていた種子が発芽できるようになり、稚樹になって生長を始める。これが自然の力による森の更新なのです」と、15メートル四方の広さの土地に育っている、高さ30センチから1メートルほどのミズナラの小苗の群れを指差す。いわゆる天然更新の説明である。
見渡す林内は、どこも褐色の落葉に覆われて、遠くまで見通せる。走り回れる林床である。このような環境であれば、植林費用が不要な天然更新も容易である。日本はモンスーン地帯であるから、湿度が高くて林内に多くの植物が繁茂しているし、ササがあると天然更新は不可能に近い。
秋の季節に入って、地表や倒木に色とりどりのキノコが生えている。「これらのキノコは、木の根に栄養を与えて共生しているのです」と説明していたポット教授が、急に大声でハンケチを取り出した。真っ白で20センチほどの傘になったキノコを包んで、皆に見せる。
「このキノコは猛毒ですから、素手で触らないでください。つい最近も10人が毒に当たって死んでます」「その人たちはロシアからの移民で、あちらには、これによく似た食べられるキノコがあるので、間違って食べてしまったのです」
宮脇先生が話を添える「ポット教授は、ハノーハー大学病院のキノコ関係の顧問もしています」
ポット教授は、あっさりと『移民』を口にしたが、盛岡の住人である私には、耳慣れない言葉である。ヨーロッパ国家間の人間や民族の移動など、まったく縁の遠い話であるから、『こちらでは、移民は珍しいことではないのだ』と思う。
平坦な砂地の遊歩道が続き、赤い標識の向こうが自然保護区の中心部という。かつて侯爵夫人の所有だった森、200ヘクタールはここからで、ポット教授の説明が始まる。
「貴族たちの趣味の一つに狩猟があって、シカなどの住みかである森を保護したのです」「この森は300年から400年ですが、ドイツでもっとも古い森です」 |
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