Nobodyという単語があります。実に不思議な単語です。Noにbodyがくっついて一語になっていて、意味は「誰も…ない」だというのですから。似たような語にno oneもあります。
さて、〓Nobody came to the community center in the morning.〓と言えば、「その公民館には午前中誰も来なかった」という意味です。でも、ちょっと待った。Everybody came to the community center.だと、その公民館に皆さんが来た、ということなのだから、「nobodyが来た」ということは「誰もない人が来た」ということになるではないか。こんな発想を日本人はしません。そういえばI have no money.だって、「わたしは無い金を持っている」と言っていることになりそうです。
Nothingという語もあります。これも、語形上はnoとthingがくっついたものです。意味はやはり「何もない」という意味です。I found nothing in the shelter.は、その避難小屋には何も見つからなかった、ということなのだけれど、基本語順の論理からすれば「何も無いものを見つけた」ということになってしまいそうです。
Nothing happened in the village.となると、「その村に何もないことが起こった」、つまり、何事も起こらなかった、ということになります。
日本語にだって「無」という語にいきなり名詞をつけて無一文などという語を作ります。それでは、no moneyもそれと同じ路線だということになるでしょうか。でも、I have no money.は、私は無一文を持っている、という直訳はできません。この問題は次回に譲って、ここでは一つだけ大事な違いをおさえておきましょう。
それは、英語では「無いナニナニ」から言い始めることが多いということです。否定語を伴った名詞がごく普通に主語の位置にも立てるという点です。
(言語人文学会顧問)
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