2006年 12月7日 (木) 

       

■  〈お父さん絵本です〉137 岩橋淳 「ぼくは弟とあるいた」

 作者・小林豊さんは、幾度となく中東・アジアを歩き、その体験を基に作品を発表し続けています。作中、詩情豊かに描かれた異国の風物はもちろん印象的ですが、絶えずどこかで起きている戦火に追われるようにして暮らす人々の姿も、多く描かれているのです。

  バルカン半島、ここは世界大戦の発火点となったこともある「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれた地域。誇り高き幾多の民族と、それをまたぐようにして引かれた国境。そして紛争の嵐はどこかで今も、無辜(むこ)の民を苦しめ続けています。

  夜明け前の自宅を、両親に見送られて出る幼い兄弟。かれらは迫り来る戦火を避けるために山を越え、砂漠を越えて遠い町の親類を目指しますが、避難民を満載した頼みの綱のおんぼろバスは案の定、あっけなく立ち往生してしまいます。見ず知らずの大人たちに囲まれての、土埃(ほこり)にまみれた逃避行の心細さ。そして思いがけず知ることとなる人の情…。

  一人ひとりは善良な民。けれど、各地で尽きることのない争いとかなしみ。純真なこどもの目を通して語られる本作は、静かな抗議が織り込まれた反戦絵本といえるでしょう。

  【今週の絵本】『ぼくは弟とあるいた』小林豊/作、岩崎書店/刊、1470円(税込み)7歳〜(2002年)

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