〔せはしくも花散りはてし盛岡をめ
ぐる山々雪はふりつゝ〕
〔現代語訳〕追い立てられるように、花も散り終わってしまった盛岡をめぐる山々に雪は降っています。
〔評釈〕「歌稿〔A〕」「大正六年四月」四十四首中の三十六首目で「485歌」。これ以降「487歌」までの三首は、「歌稿〔B〕」には収められていない。「せはし」は「セバシ(狭)と同根。間をおかない感じだ。後から後から起る感じだ」などに発して「追い立てられるようにいそがしい」の意〔『岩波古語辞典』〕。次の「486歌」でも触れるが、いろいろな花がほぼ一斉に咲くのが、北国の特徴。一斉に咲くから、一斉に散る。そんな思いを、抽出歌の話者は、「せはしくも」と表現したのだが、その中には哀惜の念も籠(こ)もっているのだとも読めよう。連作の中に置くと、この一首の話者の視線の起点が、七つ森などの近くだと特定できるわけであるが、そうだと特定してしまう長短もあろう。
(岩手大学教授)
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