日本語にだって、確かに、無人島、無害、無事故、無人駅、無一文、不正、不賛成、不確実、不公平、非常識、非武装、非公式、非公開など否定辞+名詞はたくさんありますから別に驚くことではないようにみえます。英語にも、un−,dis−,in(m)−などの否定の接頭辞があります。でも、その使われ方は日本語とかなり違うようです。
日本人は「無事故が発生した」とは言いません。「事故は発生しなかった」と言います。「無人駅を通過した」は「駅を通過する人はいなかった」という意味ではありません。「無人島に漂着した」は「誰もその島に漂着した人はいなかった」という意味ではありません。
否定が語や文のどの部分を否定しているのかという問題は大変複雑になるので深入りしないことにして、noにからむ英語の例を少し足してみます。
No person can live two hundred years old.
この文ではnoがperson(人)を否定して「無い人」のように見えます。すると、「無い人が200歳まで生きることができる」というようになりそうですが、実はこのnoは、名詞の前にありながら、can liveという動詞を否定領域にしているのです。だから、誰も200歳まで生きられない、というわけで、200歳まで生きる人はいない、という日本語に当たることになります。
どこかの国のことではないですが、No nation lives entirely isolated from others.は「他の国から完全に孤立して生きられる国なんてありません」という意味ですが、これも先の例と同様に、形としてはNo nationですから、「無い国(国民)」というように見えますが、noの否定の領域は動詞に及んでいます。
また、The missing climbers were nowhere to be found.なども、
nowhere(どこにも…ない)という語に慣れてくれば、行方不明の登山者はどこにも発見されなかった、と直解できるでしょう。こういうのは、一通り理解できたら、音読したり、書いてみたりが一番です。
(言語人文学会顧問)
用例引用:江川泰一郎「英文法解説(改訂3版)」金子書房2002
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