2006年 12月9日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉602 望月善次 ほほ、さくら、ひとときに

 〔ほほさくらひとときに咲くこの国
  は花散りてまた雪来るなれ〕
 
  〔現代語訳〕朴(ほお)、桜が一時に咲く、この北国・南部の国は、花が散った後なのに、また雪来たのです。

  〔評釈〕「歌稿〔A〕」「大正六年四月」四十四首中の三十七首目の「486歌」。一つ前の「485歌」でも触れたが、いろいろな花が一斉に咲くのが、北国の特徴で、一般的には「梅・桜」という人もあろうが、「ほほさくら」と「ほほ(朴・厚朴)」を先立てるところが賢治らしく、「ほほ(朴・厚朴)」を含む総称の「マグノリア(Magnolia)」を思い浮かべる人もいよう。「この国」は、直接的には、盛岡・花巻を含む「南部の国」であろうか。現代語訳のところでは、ここも、少しクドイ訳としておいた。いずれにしても、この北国の特徴には、その花の後に雪が降ることもあるのである。そうしたところを、無難に纏(まと)めた一首で、秀歌というのではないが、賢治にもこんな作品があるのだという小品の一つ。
  (岩手大学教授)

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