2007年 1月 1日 (月) 

       

■ 〈賢治の歌〉624 望月善次 フラスコに湯気

 フラスコに湯気たちこもり露むすび
  やまかひの朝の
  おもほゆるかな。
 
  〔現代語訳〕フラスコには、湯気が立ちこもって、露を結んでいます。(それを見ていると)山峡(やまかい)の朝のことが思われるのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の十八首目の「513歌」で、「歌稿〔A〕」では、「フラスコの歌二首」の最初の歌。「歌稿〔A〕」には、「歌稿〔B〕」以後ではないかと思われる「ひかるを見ればこゝろはるけし」もある。「フラスコ」は、御承知の、実験用耐熱ガラス製器具。長い首の部分と下に円形・三角形等さまざまな形がつく。名称は、ポルトガル語のfrasco(英語ではflask)に由来する。賢治は、農学科目第二部(後の農芸化学科)の学生であったから、当然実験は、必修のものであり、フラスコは極めて日常的に親しい実験器具。フラスコを描写した上三句と、異なった要素を持ってくる下二句という構造は、短歌の常套(とう)的表現手段だが、その効果となると今一歩だと見た。
  (岩手大学教授)

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