■ 〈わが愛する姫神山〉年間200回登頂の高橋浩さん
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姫神山山頂に立ち岩手山を展望する高橋さん |
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盛岡市玉山区にある姫神山(1123・8メートル)は昔から北奥羽の三霊山とされ、江戸時代には十一面観音が安置され山岳信仰の山だった。古くから多くの人たちを魅了し続けてきたその山に、玉山区で農業を営む高橋浩さん(65)と遠藤茂(67)さんは心を奪われている。登頂した回数は片や2千回、片や600回。ともに登ることがもはや日課だ。何のために登るのかと聞くと、2人とも健康のためと言い切る。だが、かつて多くの人が姫神山に魅了されたように、2人もまた姫神山に引きつけられ、姫神に守られているかのようだ。姫神山信仰の一つの形なのかもしれない。
■高橋浩さん
高橋浩さんは12年前から姫神山への登山を心掛け、今では年間100回以上登る。退職後は毎年200回以上になっている。本人の記録によると2004年は333回、05年は298回、06年は12月初めまでで220回。通算すると2120回を超えた。
往復に2時間は掛からない。それでも年に3度くらいは雪が腰まで積もり4時間以上掛かる日もあるという。しかし一度、登山口まで来たらどんなことがあっても「登る主義」という。
「4年前の元旦、初日の出を見ようと夜中に登山口に行くと、気温が氷点下18度だった。ここ数年で一番寒くて大変だった。でも一度来たから」と、何もなかったかのように笑いながら話した。
姫神山の東側は本州一寒いといわれる藪川。山頂はそれ以下になる。それでも長靴にちょっとした厚着で登る。
昨年は高橋さんの父親が亡くなったため49日間は休んだ。家族に止められたという。「散歩に出掛けるようなものだから良いかと思ったが、不謹慎だと言われた」。実際、高橋さんは初夏から雪が降るまでの季節は、携帯ラジオを聞きながらTシャツに短パン姿の軽装で登る。
「登山の基本では水や合羽(かっぱ)、非常食などを必ず持たなくてはいけないが、わたしの場合は何も持たない。すぐ帰るので」と、屈託がない。
姫神山のすべてを知り尽くしている。雨の日も嵐の日も吹雪の日も知っている。年間200回以上登るから天気のいい日の方が少ない。
姫神山に登り出したきっかけは、村内で行っていた健康増進活動だった。以前、旧玉山村で万歩計を貸し出した。歩数で計算して日本のどこまで行くことができるかという企画があった。鹿児島までのコースを達成した後、実際に歩いてみたくなり仙台まで歩いたこともあったという。
平地より起伏のある山の方が健康にいいのではと思いつき12年前から一番近くにある姫神山に登るようになった。100回を超えたころから回数に意識が向くようになった。すれ違う人や地元の人などが「何回になったのす」と聞いてくるためだ。
ほぼ毎日登る高橋さんにはいろいろな人が話しかけてくる。特に関東や西日本から来た登山家の人たちと情報交換するのが楽しいという。「住むところは違えど、趣味が一緒なら話が盛り上がる」と、登山を通した出会いの喜びを感じている。
庭を歩くようにすいすいと登っていく姿を見て、知人は「毎日登っているんだからきついと思わないでしょ」と言う。だが実は違う。「何回登っても体力の限界で登っているからきつさは同じ」。
「姫神山は美しい山。その山をきょうも登ることができたという達成感がある。回数は一つの挑戦。これで何かがあるというわけではないが、健康が姫神に守られているだけにありがたい」と山に感謝した。5年以内に3千回登頂を達成するのが目標だ。
■遠藤茂さん
玉山区で農業を営む遠藤茂さん(67)も健康のためにと姫神山に登るようになった一人。2004年、高血圧で入院した。これではまずいと思ったのがきっかけという。
登り始めたころは苦しくて何度も休憩した。登るだけで2時間も掛かった。それが今では往復で2時間も掛からない。
出身は県北だが、子供のころ列車で盛岡に来たとき車窓から見て覚えた。「稜(りょう)線が美しく、きれいな山だなぁ」とあこがれた。「小学生の時に2回くらい登ったことがあったが、まさかこんなに登るようになるとは」と感慨深げに話す。
姫神山を登り始めるようになってすぐに高橋さんと出会った。「苦しいとき、きついとき、高橋さんが立ち止まって話しかけてくれたり、一緒に登ってくれた山の恩人」と言う。ほぼ毎日登る二人は山でよく出会い立ち話する。
農業を営む遠藤さんは5月ころからは忙しくなるので数多く行くのは冬だという。夏は雨が降ると農作業ができないので登りに出掛ける。
見た目はすらっとして身軽な感じがするが、かつては標準体重を13キロもオーバーしていた。「今では血圧も正常値を示している。姫神のおかげ」と笑った。
遠藤さんも通算すると約600回以上になる。しかし高橋さんとはスタイルはまったく違う。
いつも「上では岩手山がきれいに見えますか」と質問されるが風景はほとんど見ていないため答えに窮するという。休憩は取らずに一気に登り切り、一気に下りてくる主義。
「景色を楽しみながら登るのは70〜80歳になってから。今は登ることに集中している」と話す。
「毎日、山に登っているだけで健康になる。見えないところで山をいろんな人が整備してくれている。本当にありがたい」という。
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