2007年 1月 3日 (水) 

       

■ 〈口ずさむとき〉1 伊藤幸子 生きる力

 健やかに元日をあれ歌詠むは力になると言ひたりし友

                               宮柊二

 新しい年が明けた。師走の、あの忙しさにかりたてられた日々を思うと、年明けの三が日はつかのま、自分をとり戻す心の余裕が得られそう。わけても早朝がいい。

  帰省した息子家族の起きてこない朝まだき、師匠の歌を口ずさむ。昭和52年作。「憂ふべき企業の先を語りゆく君が話を沁々と聞く」ともあり、つごもりに先生のお宅を訪ねられたある中小企業の社長さんを思ってのお作の由。今から35年も前の、東京三鷹の先生のお宅で、社会を、企業経営を語り「なんといっても、歌を詠むのは、生きゆく力になりますね」と話す社長さん。ケータイもパソコンもなかったけれど、自然も社会もゆったりとそしてしみじみと人の話を聞くゆとりがあったころ。

  この「生きる力」を再確認した本がある。旧臘(きゅうろう)オープンした盛岡市大通のMOSSビルジュンク堂書店にて、折口信夫と寂聴さんと佐藤愛子さんの本を買った。愛子さん「我が老後 まだ生きている」の中の一節。

  昔からの読者が尋ねてきて「佐藤先生のエッセーを読むと勇気がわいてくるんです。気力が弱っていても、先生のご本で笑うと希望が持てるんです」と言われ、先生の述懐。

  「私の読者には変わった人が多いけれど、気力の弱っているときにこんなものを読んで笑っていたとは。と言いつつ、考えてみればその私もあの寸暇もない怒りの日々に、笑い出したくなるような無駄をして、それを生きる力としていたのかもしれない−」愛子先生大好き。怒って語って笑いがいっぱい。数年前、「血脈」を読み、世田谷文学館まで先生の講演を聴きに行ったこともある。

  さて、4歳の孫が起きてきたら、「生きる力」になるような、バアバの話ができたらいいな。何はともあれ、初春雑煮で生きる力を養おう。

  (「北宴」同人)


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