2007年 1月 3日 (水) 

       

■ 〈賢治の歌〉625 望月善次 フラスコに露うち結び

 フラスコに

  露うちむすびあつまりて
  ひかるを見ればこゝろはるけし。
 
  〔現代語訳〕フラスコは、露が結んで、(それを見ようと皆が)集まって、(露が)光るのを見れば、彼方の彼方まで見えるような心持ちです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の十九首目の「514歌」で、「歌稿〔A〕」では、「フラスコの歌二首」の後半の歌。なお、「歌稿〔A〕」には、「あつまりて光るを見ればひかり思ほゆ」の形もあり、また後年の加筆だろう「かゞやけばやまかひの朝のこゝろなつかし」もある。「はるけし」は、「はるか(遙か)」の形容詞形。「はるか」は、「ハレ(晴れ)と同根。途中に障害となるものが全くなく、そのままずっと、かなたの果てまで見えているさま」〔『岩波古語辞典』〕が原義。「現代語訳」では、この原義を生かす形で、少しクドイ訳をつけておいた。理系に暗い評者の手に余るところだが、実験の知識があれば、「はるけし」に、より説得力のある説明も可能となろう。

  (岩手大学教授)

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