2007年 1月 6日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉628 望月善次 こし終えて窓に至れば

 濾し了へて
  窓にいたれば
  つめくさの
  はなとまくろきガスのタンクと
 
  〔現代語訳〕(ブンゼン・バーナーで行った実験を)濾(こ)し了(お)えて、窓に行くと、ツメクサの花と真っ黒いガスのタンクと(が見えたのです。)

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十二首目の「517歌」で、「歌稿〔A〕」では、「ブンゼン燈の哥三首」の三首目となる。初句は、「歌稿〔A〕」では「手をひろげ」であり、これを「歌稿〔B〕」では、最初「火をはなれ」とした後に、抽出歌の形としたのである。「ブンゼン燈の哥三首」の構造は、いずれも似ていることは、「516歌」でも指摘したが、ブンゼン・バーナーから離れて窓の外へ視線を転じたことでは共通しているが、「515歌・516歌」では、ただ、バーナーを離れたことのみを叙述しているが、抽出歌では、実験に一区切りがついたことを示しているし、さらに初期形では、離れて窓へと至るまでの動作を記していて、そうしたわずかな相違がなかなか面白い。抽出歌の核心は、シロツメクサの白とガス・タンクの黒とのコントラストである。
  (岩手大学教授)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします