2007年 1月 7日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉629 望月善次 静かなる花を湛うる

 〔はくうんぼく〕

  〔静かなる花を湛ふるかゞやきのは
  くうんぼくにむるゝすがるら〕
 
  〔現代語訳〕静かな花を一杯につけ輝いているハクウンボクに群れているスガル蜂たちよ。

  〔評釈〕「歌稿〔A〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十三首目の「518歌」。表記で示したように「歌稿〔B〕」では採られていない。結句の「むるゝ」は、当初「むれし」。「湛ふる」は、(水などが)一杯になることだが、漢字の「湛」は「水+甚(深い)」で、「水が深い」意。「ハクウンボク(白雲木)」は、「オオバヂシャ」とも言うエゴノキ科の落葉高木。その漢字が示すように、白い花が一杯につく。「すがる」は、一般的には、「ジガバチ(似我蜂)」のことだが、南部方言では、蜂、土蜂を言う〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。高木の白い花を一杯につけたハクウンボクに群がっている蜂たちの群は大と小、白と黒とのコントラスト。「かがやきのはくうんぼく」の結合比喩(ゆ)も効いている。

(岩手大学教授)

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