2007年 1月 8日 (月) 

       

■ 〈賢治の歌〉630 望月善次 朝日降るハクセンボクの

 あさひふる
  はくうんぼくの花に来て
  黒きすがるら
  しべを噛みあり
 
  〔現代語訳〕朝日が降るハクウンボクの花に来て、黒いスガル蜂達が蕊(しべ)を噛(か)んでいます。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十三首目の「519歌」。第三句には「にむらがりて」が、また結句には「噛みたり。」「噛みゐき。」の形もあった。エゴノキ科のハクウンボク(白雲木)や蜂であるスガルについては、既に言及しているので繰り返さない。「しべ(蕊)」は、「雄蘂・雌蘂」の「しべ」。初句の「あさひ+ふる」と第四句から結句にかけての「すがる〜噛み」が結合比喩(ゆ)ではあるが、両者共、半ば常套句にもなっている語句であるから、比喩度は低く、全体的には素直な叙景歌だという読後感を与えよう。僅かに、「あさひ」の光、「はくうんぼくの花」の白、「すがる」の黒のコントラストが、賢治らしい一端をのぞかせている一首であると言えるであろうか。

(岩手大学教授)

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