2007年 1月 11日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉633 望月善次 しらしらと銀河わたれる

しらしらと
  銀河わたれるかしはゞら
  火をもて行けど
  馬も馳せ来ず
 
  〔現代語訳〕白々と銀河が覆い尽くしている柏(かしわ)の原よ。松明(たいまつ)を持って行きましたが、(季節が季節なら、火を掲げると走って来るが、時期的に放牧も終わっているので)馬も走っては来ないのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十六首目の「522歌」で「夜の柏ばら 六首」の冒頭歌。結句には「馬も来たらず。」の形も。「しらしらと」と「白々と」であるが、オノマトペ的用法を重ねるのも一興。「わたれ(「渡れ)」は、「わた(海)と同根。水面や空間を直線的に横切って、向う側に着く意。移行の経路がはっきりしているので、出発点と到着点との二つの方面にかかわる意も表し、平面的な広がりに関してもいうようになった。」〔『岩波古語辞典』〕語。「かしは(柏)」は、ブナ科の高木。「いつもなら火を見て若駒たちが馳けて来るんだが……。もう放牧も終わったから。」は、『兄のトランク』の一節で、余りもの符合は、短歌をのみ込みかねない勢い。
(岩手大学教授)
 

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