2007年 1月 12日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉634 望月善次 天の川しらしら光り

 天の川
  しらしらひかり
  夜をこめて
  かしはゞら行く鳥もありけり。
 
  〔現代語訳〕天の川は白々と光り、一晩中、柏(かしわ)の原を行く鳥もあったのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十七首目の「523歌」で「夜の柏ばら 六首」中の作品。結句には「馬も来たらず。」の形も。「522歌」でも挙げた宮沢清六の『兄のトランク』の「麓の若駒たち」の冒頭は「そのころ私は中学一年生で、兄の賢治は農林学校の三年生であった。かねて岩手山に登りたいとせがんでいたのがやっと叶(かな)って、兄と私と従兄たち二人で盛岡を出たのは、十月も末に近い土曜日の午後であった。」とあって、その記述内容は、「夜の柏ばら」にも一致しているが、『新校本宮澤賢治全集 第十六巻(下)』の「年譜篇」では、六月と十月の両方に岩手山に登ったのだとしている。「ありけり」の回想的叙述と重ね合わせると、その事情の如何(いかん)も興味深い。
(岩手大学教授)

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