2007年 1月 13日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉635 望月善次 かしわばら薄ら明かりは

 かしはゞら
  うすらあかりはきたるなり
  みなみにわたる天の川より。
 
  〔現代語訳〕柏(かしわ)の原に少しの明るさは来たのです。南にかけて空を覆っている天の川から。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十八首目の「524歌」で「夜の柏ばら 六首」中の作品。「うすら(薄ら)」の「ら」は、形容詞やオノマトペ(擬態語)の語幹について物事の状態などを示す語で、「薄い」の語幹「薄+ら」となり、「少し」等の意味を示すことになる。「うすらあかり」は、賢治好みの一つで、その漢語的表現である「薄明」は、短歌作品中にもしばしば現れる。理念的には、夕べのものと明け方のものとが考えられるが、連作中の一作品だという点からすれば、明け方のもの。その「うすらあかり」が客観的にどこから来ているかについては、異論もあるわけだが、話者の主観として、それが「天の川」から来たと認識したことによって「作品」が成立する。
  (岩手大学教授)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします