2007年 1月 4日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉626 望月善次 暮れ近きブンゼン灯を

  〔ブンゼン燈の哥三首〕
  くれちかき
  ブンゼン燈をはなるれば
  つめくさのはな
  月いろにして
 
  〔現代語訳〕夕暮れも近いブンゼン・バーナーを離れて、(目を窓の外に転ずると)ツメクサの花は月色なのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十首目の「515歌」で、「歌稿〔A〕」では、「ブンゼン燈の哥三首(「哥」は「可」を重ねた文字で、「カ」を伸ばすことから「歌う」意味となる)」の冒頭歌。「ブンゼン燈」は、ドイツの化学者ブンゼン(一八一一〜一八九九)の発明した「ブンゼン・バーナー」のこと。「ツメクサ」は、通常はナデシコ科の一〜二年草。三〜七月に白色の五弁花をつける。また、マメ科のシロツメクサ(クローバー)やアカツメクサ(レッド・クローバー)を指すこともあるという〔『マイペディア』〕。ここでは、賢治の他の作品例からも、「シロツメクサ」のことか。目を転じた窓の外に何を見るか、それをどう現わすかが、作品として勝負となる。
(岩手大学教授)

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