2007年 1月 5日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉627 望月善次 ブンゼン灯の弱炎

六月の
  ブンゼン燈のよはほのほ
  はなれて見やる
  ぶなのひらめき。
 
  〔現代語訳〕この六月のブンゼン・バーナーの弱い焔(ほのお)よ。それを離れて、目を(窓の外に)転ずるとブナがきらきらとした光を放っています。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」(「大正六年五月)四十五首中の二十一首目の「516歌」で、「歌稿〔A〕」では、「ブンゼン燈の哥三首」の二首め。第二句は、「歌稿〔A〕」では「弱ほのほ」の表記。「見やる」には、「遠方を見る」「その方角を見る」の二つの意味があるが、ここでは後者の意味であろう。「ひらめき(閃き)」には、「鋭い光」などの意味のほかに、「きらきらと光る」などの意味があるが、ここではその意味だとした。室内の実験室から外を見ると、ただでもきらきらとするブナの木の鮮やかさが一層目にしみるように思ったであろう。「ブンゼン燈の哥三首」は、ブンゼン燈による実験から視線を窓の外に転ずると、そこに何が見えたかという点では共通しており、同じ構造となっている。
(岩手大学教授)
 

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