2007年 2月 1日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉654 望月善次 夜の間がらちゃんがちゃがうまこ

 夜の間(ま)がら ちゃんがちゃがう
  まこ
  見るべとて 下の橋には いっぱ 人
  立つ
 
  〔現代語訳〕夜の間から、チャンガチャガ馬コを見ようと言って、下の橋にはいっぱい人が立っています。

  〔評釈〕『あざりあ』第一号(大正六年六月中)「ちゃんがちゃがうまこ」八首中の冒頭歌。『あざりあ』における八首のうち、「歌稿」に採られなかったのは、抽出歌のほか5/8、6/8、8/8の計四首。「下の橋」は、中津川にかかる「上の橋・中の橋」と並ぶ橋の名。賢治の盛岡時代は、「下の橋」は、チャンガチャガ馬コの通り道であり、藩政時代には馬飼農民の馬神への投げ銭も行われた場所でもあると言う〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕。「いっぱ 人立つ」には、こうした伝統の影響もあったのだろうか。短歌定型は、五七五七七の音数律に乗る限りは、地域語も盛り得る器であることは繰り返して述べているが、そんな知識などないままに地域語を盛り得た賢治の感慨はいかばかりであったろうか。
(岩手大学教授)


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