2007年 2月 2日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉655 望月善次 中津川ぼやんと

 中津川ぼやんと しいれい藻の花に
  かゞった橋の ちゃがちゃがうまこ
 
  〔現代語訳〕中津川よ。ぼーと白い藻の花(が咲いているその流れ)に架かった橋のチャンガチャガ馬コよ。

  〔評釈〕『あざりあ』第一号(大正六年六月中)「ちゃんがちゃがうまこ」八首中の五首目で「歌稿」には採られなかった作品。こうした作品の場合、主眼である「ちゃんがちゃがうまこ」そのものをどう描写するかと並んで、それをどうした風景の中に置くかも作者の腕の見せどころ。抽出歌においては、馬が渡って来る橋の下を流れる川(中津川)の様子と対比させてみせたのである。既に言及した「507歌(歌稿〔B〕)」の「中津川 川藻に白き花さきて/はてしも知らず 千鳥は溯(さかのぼ)る」を挙げるまでもなく、中津川における「川藻の白い花」は、賢治にとって印象的であった風景。「ぼやんと しいれい」「藻の花」は、「ぼやんと」ではなく、話者の心の中にくっきりとした印象を占めているのである。
  (岩手大学教授)


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