2007年 2月 3日 (土) 

       

■  〈賢治の歌〉656 望月善次 橋むっけの闇のなががら

 はしむっけのやみのなががら 音がして
  ちゃがちゃがうまこは 汗たらし来る
 
  〔現代語訳〕(下の橋の)橋の向こうの闇の中から音がしてチャガチャガ馬コは、汗を垂らして来ます。

  〔評釈〕『あざりあ』第一号(大正六年六月中)「ちゃんがちゃがうまこ」八首中の六首目で、やはり「歌稿」には採られなかった作品。「むっけ」は「向こう」の意。したがって、「はしむっけ」は「橋の向こう」の意となる。橋(下の橋)の向こう側からやって来る馬(チャガチャガ馬コ)を待ち受けているわけであるが、その様子は大きく三段階となろう。第一段階においては、まず闇を通しての音(チャガチャガ馬コがつけている鈴の音であろうか)がする。次の第二段階では、馬が実際に姿を現す。第三段階では、その馬を見ると、「汗たらし」ているのである。抽出歌では、第一段階と第三段階とが示され、第二段階は当然のこととして省略されている。「作品化」プロセス考察の一例ともなろうか。
  (岩手大学教授)
 


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