2007年 2月 7日 (水) 

       

■  〈賢治の歌〉660 望月善次 川べりの石垣の真昼

 川べりの
  石垣のまひるまどろめば
  夜よりの鳥なほ啼きやまず。
 
  〔現代語訳〕(川縁)川岸にある石垣、そこに、真昼を、うとうととすると、夜からの鳴いている鳥は、まだ鳴きやまないのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の三首目の「543歌」。『アザリア』第二輯(しゅう)では、「夜のそらにふとあらはれて」八首の三首目で、「青びかる河べりにしてまどろめば夜つぴて鳴けるとりまたなけり、」の形。「歌稿〔B〕」では、第四句冒頭に「よべ」も。「まどろむ(微睡む)」は、「目(ま)蕩(とろ)む」〔『広辞苑』〕。「秋田街道」の「すっかり晴れて暑くなった。雫石川の石垣は烈(はげ)しい草いきれの中にぐらりぐらりとゆらいでゐる。その中でうとうとする。/遠くの楊(やなぎ)の中の白雲でくゎくこうが啼(な)いた。『あの鳥はゆふべ一晩なき通しだな。』『うんうん鳴いてゐた。』」に対応する。「川(雫石川)」や「とり(くゎくこう)」が具体化する長短が透けて見える。

  (岩手大学教授)


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