2007年 2月 9日 (金) 

       

■  〈賢治の歌〉662 望月善次 川べりの真昼を揺らぐ

 川べりの
  まひるをゆらぐ石垣の
  まどろみに入りて
  鳥またなけり。
 
  〔現代語訳〕川べりの真昼にゆらゆらと揺らぐ石垣の(下で)まどろみに入りましたが、鳥はまた鳴いたのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の五首目の「544歌」。『アザリア』第二輯(しゅう)では、「夜のそらにふとあらはれて」八首の四首めで、「河ぶちのまひるゆらげるいしがきの、まどろみに入りてまた鳥なけり」の形。なお、結句は、当初「また鳥なけり(鳴けり)」の表記。「543歌」の際にも引いたが、「秋田街道」の「すっかり晴れて暑くなった。雫石川の石垣は烈(はげ)しい草いきれの中にぐらりぐらりとゆらいでゐる。その中でうとうとする。」に対応する。「まひるをゆらぐ」も、初夏の暑さを背景にすれば理解容易となるだろう。強引過ぎるかも知れぬが、「石垣の」の「の」を主格として、石垣自身がまどろんでいるのだとする結合比喩(ゆ)的解釈も過ったことも記しておこう。

  (岩手大学教授)


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