2007年 2月 10日 (土) 

       

■ 〈英語ってどうなってんの?〉192 成田浩 作り手の側から見た英和辞典12

 一般に熟語や成句と言われるものは比喩(ゆ)を基盤にしているものが多く、それは英語も同じですが、例えるものと例えられるものが日本語と違うときには取り上げる必要があります。pearl(真珠)の項にある有名な語句(成句)cast (throw) peals before swineは「豚に真珠を投げ与える」ですが、これは「貴重なものを与えても、人によっては何の役にも立たない」ということで「猫に小判」に近い言い方です。

  かと思えば、sit on pins and
  needlesの場合は「(画)鋲(びょう)と針の上に座る」のだから、「針のむしろに座る」つまり「苦痛きわまりない」(広辞苑)という意味にとってしまう可能性があります。でも、これはそうではなくて、手足のしびれが直りかけた時の感じを表現するのだそうで、アメリカ英語で「ひどくそわそわする」「やきもきしてひどく不安だ」という言い方です。

  blow some steam off はどうでしょう。blow off は「〜を吹き飛ばす」という意味までは分かっても、人が主語にくると、steam(蒸気)とうまく結びつきません。「蒸気を吹き出す」というのはどういうことだろうと思ってしまいます。これは「うっぷんを晴らす」「悩み、精力などを発散させる」というのに当たります。

  一方、lend a hand toというのでは、lendは「〜を貸す」でa hand は「手」ですから、偶然にも日本語の「手を貸す」に近いので「手伝う」ということだと気がつきやすいです。でもこれと同じようなgive a hand toとなると少し分かりやすさが減ります。

  いずれにしても、身体の一部としての「手」から意味が離れていくにつれて、熟語度が上がっていきます。この傾向は英英辞典も日本の国語辞典も同じですが、英和辞典に記載するときには日英の落差や程度差に気を使うことになります。「あの手この手で」「手を切る」「手をこまねいて」「手が焼ける」など広辞苑にはたくさんの熟語が載っています。handのほうの熟語(太字扱い)の例と比べてみると言語文化の違いを感じます。
(言語人文学会顧問)


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