2007年 2月 11日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉664 望月善次 歪みたる蒸留瓶の

 ゆがみたる
  蒸留瓶の青ぞらに
  黒田博士はたばこふかせり。
 
  〔現代語訳〕歪(ゆが)んでいる蒸留瓶に映っている青空の中で黒田博士は煙草(たばこ)をふかしています。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の七首目の「546歌」。『アザリア』第二輯(しゅう)では、「夜のそらにふとあらはれて」八首の五首めにあり、「ゆかみたるあをぞらの辺に仕事着の古川さんはたばこふかせり」であった。「歌稿〔A〕」を踏まえた第二句は「青ぞらの邊に/仕事着の/古川さんは(教授、)」の形であった。「小岩井農場 パート一」の冒頭では、「化学の並川さん」の名前でも出てくることで知られるモデルは、古川仲右衛門教授であり、賢治の特業論文指導教官でもあった。〔「宮沢家本」の『春と修羅』では、「並川」は「古川」と訂正されているという。)〕「黒田博士」とくるのなら、博士を思い切って「蒸留瓶の青空」の中に入れてしまいたい思いもある。

  (岩手大学教授)


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