2007年 2月 12日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉665 望月善次 歪みたる青空の辺に

 ゆがみたる
  青ぞらの辺に
  仕事着の
  黒田博士は
  たばこふかせり
 
  〔現代語訳〕歪(ゆが)んでいる青空の辺りで、仕事着の黒田博士は煙草(たばこ)の煙を吐きだしています。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の八首目の「546・547a歌」。「547歌」の下に書かれたもの。「吹かす」は「くゆらす」などと同じ意味で、「(吸った煙などを)外へ吹き出す」の意味を表す〔『広辞苑』〕。「547歌」の「ゆがみたる/蒸留瓶の青ぞらに/黒田博士はたばこふかせり。」とほとんど同じ内容を示しているが、抽出歌においては、「ゆがみたる青ぞら」が意味するものが特定しづらくなっている(している)。つまり、モデルとなっている現実世界との距離が拡大していることになる。その作品を享受する場合においても、現実世界との距離をどう取るかは、抽出歌における重要な論点。実験室で使用する白衣を、「仕事着」としているところも面白い。
(岩手大学教授)


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