2007年 3月 4日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉684 望月善次 展べられし昆布の

 展(の)べられし昆布の中に
  大なる釜らしきもの
  月にひかれり。
 
  〔現代語訳〕広げられた昆布の中で、大きな釜のようなものが月に光っています。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の二十六首目の「564歌」。「展べ」のルビ「の」は、原文。「展」は、「人が体を転がして悩むこと」から「延ばす」等の意味が発生した漢字で、「のぶ(伸ぶ・延ぶ)」は「曲がったり、縮んだりしたものを)ひろげる」意味。昆布などの様子は、正に後者の典型。「釜らしきもの」の「釜」は、「昆布を煮る」ための釜か。また、この場合の「らしき」は、話者が、それが「釜」であるかの判断を迷ったというより、短歌定型の七音を視野に入れた婉曲表現だと見た。ところで、はっきりとした証拠があるわけではないが、結句の「月の光」は、実際に目にした「月」なのだろうか、どうも違うのではとも思ってしまったことも記しておこう。

(岩手大学教授)

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