青山の
肩をすべりて夕草の
谷にそゝぎぬ
青き日光
【現代語訳】青い山の肩を滑って、夕べの草が生えている谷に注いだのです。青い日光は。
【評釈】「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の二十七首目の「565歌」。行変え、句点を除くと、「歌稿〔A〕」とも変わらず、「歌稿〔B〕」における異同もない。伝記的な対応や、前後の歌群からすれば、「蕩児の群」に交じった「酒の旅」に始まった一連の旅にかかわる作品であることは間違いのないところであるが、ここでは、そうした関連をかっこにくくって、一応「独立した作品」としてのコメントを加えることにしよう。何と言っても、目につくことは、賢治文学の基底とも言うべき「結合比喩(ゆ)」である。「青山vs肩」「(日光が)vsすべり」「夕草vs谷」「青きvs日光」とその連続であるが、その成熟度は、後年の域ではない。「青」の登場もあるが、既に詳述している時間がない。
(岩手大学教授)
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