| さらに言えば、英語はイギリスやアメリカだけの言葉というよりは、スラブ語圏を除いたとしても、もはや中立的な伝達手段となっているといえるでしょう。英語を使う人の数は英米両国の英語話者の合計よりもそれ以外の国々のほうがずっと多いということです。それが、前回述べた地域英語であり、World Englishesなのです。
地域英語の一つであるジャパニーズ・イングリシュの特色は、fの発音がフに、thの音がスやズになるとか、あのいやな3人称単数の-sなんてないのが日本語ですから、「花子は走るズ」なんて言わないわけです。
ですから、日本語が英語に転移して、Hanako run. としてしまうとか、単数形と複数形の区別がないので,例えば「バスを乗り換える」では、乗り換えるからには乗ってきたバスとこれから乗るバスの2台がからんでいるはずだからbusesだ、なんていうことは思いもよらないことなので、change the busのようにbusを単数形のままで言ってしまう(第5回参照)など、たくさんあります。
でも、これで通じることは通じるのです。文法標識としての-sがなくても語彙(ごい)的意味(単語の意味)とその場の状況でわかります。ほかの地域英語の例にもこれに近いものがあります。
それに、地域英語には自国の民族の生活習慣も伴います。私はNice to
meet you.(初めまして)と握手しながらお辞儀をしていたことがあります。いまでもそうなることがあります。テレビでインドの高官が合掌しながら英語であいさつしている姿を見ることがあります。英語は使っても自分の文化は失っていないのです。英語を使って日本のことを外国にわからせようという流れもそこにつながるのでしょう。
英米などの母国話者もアジアや東南アジアの地域英語に慣れる必要が出てきているということです。ビジネスの世界ではそれが普通だと聞きました。こちらがジャパニーズ・イングリッシュで話しても、ほとんどわかるようです。彼らは英語の地域差に寛容になってきているといわれています。他の地域英語の例は次回に挙げます。
(言語人文学会顧問)
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