ここアジアゴの人々にとって、2月最後の日は、冬の終わり。「シェラ・マルツォ=春を呼ぶ祭り」が盛大に行われます。今年は暖冬で、ほとんど雪も降りませんでしたが、春を待ちわびる気持ちは変わりません。
2月中旬のカーニヴァルが終わると、各家庭では、ブッソロッティ作りが始まります。いくつもの空き缶を紐(ひも)でつなげた鳴り物で、それを引きずり歩き、大きな音を出して、冬の悪魔を町から追い出そうというのです。わが家でも、集めて置いたジュースや缶詰の空き缶に穴を開け、紐を通して、長さ2メートルのブッソロッティを2本作りました。
2月28日の夜9時を回るころ、ブッソロッティを2人の娘に引きずらせて町に向かうと、夕食を終えたあちこちの家族が合流、次第に長い行列になっていきました。ガラガラ、ゴーゴーと缶を引きずる音は、まさに轟(ごう)音。宵闇に響き、恐ろしい冬のうめき声のようです。
町の中心にある市庁舎広場は、すでに黒山の人だかり。そこへ「冬の象徴」である巨大な張りぼての魔女が台車に乗って登場すると、今度は、魔女を先頭に、目抜き通りを練り歩きます。今年の魔女は、おしゃれな虹色の衣装。毎年、町の青年会総出で作られます。
ドラム缶で作った自慢のブッソロッティを引きずりはしゃぐ子どもたち。ゆっくりと後に続く大人たち。町を挙げて、冬を追放です。
ヨーロッパの歴史に、魔女が登場するのは、中世。悪の象徴である魔女は、自慢の箒(ほうき)で、悪を追い払うともいわれます。善と悪は、昔から、表裏一体なのです。
町を練り歩いて1時間、大行列が市庁舎前に帰ってくると、いよいよ魔女は火あぶりの刑。「冬よさようなら。暖かい日差しが待っている」と、魔女の周りに積んだ薪(まき)に火が入ると、橙(だいだい)色の炎が、生き物のように夜空に立ち上りました。魔女の運命もここまで。
午前零時、引きずり帰るブッソロッティが、歓(よろこ)びの声に変わりました。
(隔週火曜日掲載)
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