アフリカのサバンナ、屹立(きつりつ)する一本のバオバブの樹(き)。それ以外には、雲が写っているだけの写真。この写真から触発されて、作者はこの物語を発想したといいます。
孤高の樹から連想されたのは、一羽の大きなダチョウでした。エルフという名前の由来ともなったその健脚はひと息で千メートルを駆け、強く、優しく、知恵のある草原の人気者。毎日が、楽しく過ぎてゆく。…そんな平和な草原も、実は楽園ではありません。弱肉強食の掟(おきて)は、エルフたち仲間の上にも例外なくあてはまるのです。
版画で表現されたシルエット調の動物たちは躍動感にあふれ、今にも動き出しそうに迫ります。そして主人公・エルフのたどる運命に感情移入を禁じ得ない、物語の展開。強くあること、気高くあることの誇らしさと、背中合わせにある孤独感。
…ハッピーエンドのおはなしに慣れきったこどもには、刺激が強いかもしれません。それでも、この物語に触れた幼い心には、これから長い人生を生きてゆく上での選択肢のひとつが、どこかの引き出しに畳み込まれていくように思えます。
【今週の絵本】『かたあしだちょうのエルフ』おのきがく/文・絵、ポプラ社/刊、1050円(税込み)6歳〜(1970年)
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