2007年 4月 7日 (土) 

       

■ 〈賢治の歌〉717 望月善次 夜だか鳴き、オリオンいでて

 夜だか鳴き、オリオンいでて、あか
  つきも ちかく
  お伊勢の杜をすぎたり。
 
  〔現代語訳〕夜鷹(だか)か鳴いて、オリオン座が出現して、暁も近い頃(ころ)、お伊勢の杜(もり)を過ぎたのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の五十八首めの「591歌」。「歌稿〔A〕」では、第四句の「ちかく」は、「近く」であり、結句は「すぎゆく」であった。「夜だか(夜鷹)」は、「よだかの星」を典型に、賢治作品の中ではおなじみの鳥。「よだか」は、「賢治独特の方言ふうのにごり」〔『新宮澤賢治語彙辞典』〕で、一般的にはヨタカ。ヨタカ科の鳥で、日本では夏鳥。〔『マイペディア』〕。オリオンも賢治作品にしばしば登場する星座。夏には明け方の空に出る。「杜」は、本来は「やまなし」や「塞(ふさ)ぐ」を表した漢字で、「森」の意味は国訓。暁近く「杜をすぎたり」と纏(まと)める単純な作品だが、「夜鷹」「オリオン」を、その傍証としているところが賢治的。

(岩手大学特任教授)

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