2007年 4月 8日 (日) 

       

■ 〈賢治の歌〉718 望月善次 明け近く、オリオンのぼり

あけちかく、オリオンのぼりけりなきて
ひとりお伊勢の杜をよぎれり。
 
  〔現代語訳〕明け方近く、(空には)オリオン座は昇り、ケリ(鳬)も鳴き、私は一人お伊勢の杜を過ぎたのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の五十九首目の「592・593a歌」。「592歌」の左下に書き込まれたもの。当初「夜だ/夜だか鳴き/オリオンのぼるあけちかく」と始まったものを抹消して「鷹↓けり」、「われは↓ひとり」、「すぎたり↓よぎれり」の推敲(すいこう)を経て抽出歌の形となった。内容的には、「592歌」と重なっている。「ケリ(鳬)」は、「新校本全集」等によって、鳥の名前だとした。(「チドリ目チドリ科の鳥。名は鳴き声から。チドリに似るが肢が長い。主として東北地方の草原にすみ、冬は南方に渡る。季語は夏」〔『マイペディア』〕。)しかし、明け方を示す鳥として、「ケリ(鳬)」が適当か、「夜鷹」が適当かは、評者の力量に余るところ。
(岩手大学特任教授)

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