2007年 4月 9日 (月) 

       

■  〈賢治の歌〉719 望月善次 薄月に輝きいでし

  「上伊手剣舞連」
  うす月に
  かがやきいでし踊り子の
  異形を見れば こゝろ泣かゆも。
 
  〔現代語訳〕仄(ほの)かな月の光に輝き出した(伊手剣舞の)踊り子の普通ではない形を見ると心は自然に泣けて来るのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の六十首めの「593歌」で、「上伊手剣舞連」の三首中の冒頭歌。「歌稿〔A〕」には、「(以下江刺地質調査中)上伊手剣舞連四首」とも。「歌稿〔A〕」には、初句には「ひらめき」、結句には「われら泣かゆも」の書き込みもある。「剣舞」は剣をもって踊る念仏踊りで、地方によってさまざまな形がある。伝記的には、地質調査に出掛けた賢治たちが伊手の剣舞を見たのは、九月二日の夜だとされている。「うす月(薄月)」は、仄かな光を出している月。「異形」は、「普通ではない形」。結句に「こゝろ泣かゆも」とあるから、話者が、踊り子たちの異様な姿に感動したことは分かるが、その具体がどうしたものであるのかは明らかではない。
(岩手大学特任教授) 

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