2007年 4月 10日 (火) 

       

■  〈賢治の歌〉720 望月善次 うす月にむらがり踊る

 うす月に
  むらがり踊る剣舞の
  異形きらめき小夜ふけにけり
 
  〔現代語訳〕仄(ほの)かな月の光の中に、何人もが一緒になって踊る(伊手)剣舞の異形の姿がきらきらと光り輝いて、夜は更けたのです。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の六十一首目の「594歌」で、やはり「上伊手剣舞連」三首中の二首め。結句は、「歌稿〔A〕」の「こころ乱れぬ」から、「乱るる」「ともなし」などの後、抽出歌の形。「剣舞」にはいろいろな形があるが、通常何人もの人が一緒になって踊る。その同じリズムを繰り返すようにして踊る様は、一種独特な雰囲気を持つ。そこに差す光は、満月等の皓々(こうこう)とした光もいいが、「うす月」が一層いいというのが話者の判断。剣舞の踊り自体は、飽くことなく繰り返されるのであるが、その踊りと共に夜は更けていくのである。(「小夜」の「小」は、語調を整える接頭語。)もちろん、「異形きらめき」「小夜ふけにけり」は、文学的論理関係である。
(岩手大学特任教授)

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