2007年 4月 12日 (木) 

       

■  〈賢治の歌〉722 望月善次 剣舞の赤ひたたれは

 剣舞の
  赤ひたたれは
  きらめきて
  うす月しめる地にひるがへる。
 
  〔現代語訳〕剣舞の赤い直垂(ひたたれ)は、光り輝いて、仄(ほの)かな月の光に湿っている地面の上に翻っています。

  〔評釈〕「大正六年七月より」〔「歌稿〔B〕」〕百十一首中の六十二首目の「596歌」で、「上伊手剣舞連」三首中の三首め。「歌稿〔A〕」とは、行変え、句点以外の異同はない。「ひたたれ(直垂)」は、ご存じの上着と袴(はかま)からなる武家の衣服。古くは庶民のものであったものが、鎌倉以後公家や武士の平服・礼服となり、江戸時代には、遂に、侍従以上の最高礼服になったという、まるで出世魚のような歴史を辿(たど)る。「うす月しめる」は、「月光が、実際に地面を湿らせる」ことはないから結合比喩(ゆ)。仄かな月光によって地面が濡れている感じを与える場合と、夜の湿気が満ちて、そこに仄かな月の光が差している場合とが考えられよう。剣舞のどこに注目するか。そこに作品の特徴が現れるのである。
(岩手大学特任教授)

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